今回紹介する本は、「FINAL FANTASY XVの人工知能-ゲームAIから見える未来-」と言う本。
ゲームAIで有名な 三宅陽一郎 さん率いる スクエア・エニックスのAIチーム が共著した ゲーム AI本 です。
名前にあるように、FINAL FANTASY XV で使われている各種ゲームAIの技術を対象に、ゲームAIについて解説された技術書 です。
各要素技術の設計開発担当者の方々が、それら技術の詳細まではいきませんが 概要を分かりやすく、各章にて説明されております。
【感想】
また、本書の内容は後で説明しますが、メインの内容の合間に関係者が集まっての座談会の様子が載っています。それがけっこう面白いですね。
いくつかの座談会が行われたらしく、それぞれ集まった人達が違うようですが、私が興味深かったのはAIプログラマが集まっての座談会。
彼ら曰く、見た目のグラフィックがリアルになったことで、他の要素もよりリアリティが求められるようになったと。戦争中に遊びだしてたらリアル感がない。グラフィックがそこまでリアルでない時はゲームだからと笑って許されたところ。
そして、特にFFXVで成功した人工知能が仲間AIだそうです。チームの仲間が自然に自律的に動く。要は操作している主人公の前にまで仲間が自然に出てくる。当然主人公はプレイヤーが操作しているので、プレイヤーの動きを予測しつつ自然な状態を作っている。
その自然さを作るために、実際に開発者が4人で歩きどのような動きをすると自然か。4人でも自然に2対2になるよね等、実際に観察・実体験をして開発していったとのこと。
また、技術者は機械学習も導入してゲームAIを作る研究はしている。しかし、学習で作っていると微調整が難しいと言うのがあり、物語やゲーム性を考えているゲームプランナーと相容れないものがあると。
【概要】
まず、この大きなゲームの物語の世界を構成するためのゲームAIについて。それには以下の3つの柱があるそうです。
・メタAI:ゲームを神様の視点から眺めて調整。
・キャラクターAI:各キャラクターを自律的に行動させるための知能。
・ナビゲーションAI:キャラクターが直面する多様な地形に関する思考を抽象化する役割。
これらの3つの柱と言われるAIの要素として各種AI又は要素技術が存在します。それら1つ1つ要素が本書では各章を構成しており、それらの関係は以下のようになっています。
メタAI:
仲間AI(6章)、モンスターAI(7章)、兵士AI(8章)、
アンビエントAI(9章)、ロギングと可視化(13章)
キャラクターAI:
意思決定ツール(2章)、AIとアニメーション(4章)、
写真AI(10章)、会話AI(11章)、AIモード(12章)
ナビゲーションAI:
ナビゲーションシステム(3章)、位置検索システム(5章)
また本書は複数の筆者が執筆しており、傾向も難易度も違うので、読むときの目安として以下の読み方ガイドが参考になります。
ゲームの中身に寄り添った章(ゲームの裏側を知ることができる。):
仲間AI(6章)、モンスターAI(7章)、兵士AI(8章)、
アンビエントAI(9章)
AIの基本的な仕組みを描いた章(ゲームAIの基本的な仕組みを知ることができる。):
ゲームAI入門(1章)、意思決定ツール(2章)、
AIとアニメーション(4章)
AIの特徴的な技術を解説した章(ゲームAIの専門的な独立性の高い技術を学ぶことができる。):
写真AI(10章)、会話AI(11章)、AIモード(12章)
やや専門的な章(かなり詳細に踏み込んだ専門性の高い技術解説となっている。):
ナビゲーションシステム(3章)、位置検索システム(5章)、
ロギングと可視化(13章)、これからのゲームAI技術(14章)
【具体的内容】
上にも既に書いてますが、本書の各章はゲームAIの要素としての各種AI又は要素技術についてが1つ1つ説明されています。ここでの具体的内容としては、その各章の概要を本書の記述を使用して書き出しました。
この章立てと各章の概要を見ることで、本書の内容はだいたい把握できるかと思います。
基礎編
1章:ゲームAI入門
そもそもゲームAI(デジタルゲームの人工知能)とは何かについて解説。
2章:意思決定ツール
ゲームと言う箱庭の中で、複雑なマップ・状況における高度なミッションを人工知能に解かせるというようなゲームAIの中心的なテーマであるキャラクターの意思決定について。
3章:ナビゲーションシステム
ナビゲーション技術やパス検索に加え、身体を持つキャラクターがゲームの環境下で目的に沿って運動するための技術を解説。
4章:AIとアニメーション
仮想の身体はモーションによって駆動しますが、そのタイミング・変形・次のモーションへの遷移などを決めるうえで、人工知能がどのようにかかわっているかを解説。
5章:位置検索システム
ゲーム内で現在そのキャラクターがいる周囲の地形を認識し、自分に最も相応しい立ち位置を見つけることを可能にする位置解析技術について。
コンテンツ編
6章:仲間AI
プレイヤーと一緒にいる時間の長いキャラクターは、あらゆるケースに自然に対応させつつ、ほころびが出ないようにしなければならない行動の人工知能が必要で、その仲間AIを解説。
7章:モンスターAI
たくさんの種類のモンスターを統一的な仕組みで扱うことを探求し開発された、広大なマップのいたるところに群生する生命を持つようなモンスターたちの人工知能を解説。
8章:兵士AI
プレイヤーが敵と遭遇した時に「脅威」を感じ、倒したときに「障害を乗り越えた」と言う喜びを感じさせる存在である敵の「思考」「移動」「行動」をするAIについて解説。
9章:アンビエントAI
街の活気を表現するのに必要な群衆(アンビエント)の人工知能。「街とは何か」「人の活気とは何か」と言う点を徹底的に追及したAIに関する解説。
10章:写真AI
FFXVにある自動的に写真を撮る機能で使われる、良いタイミングで写真を撮ってくれる人工知能について。
未来編
11章:会話AI
キャラクターに自然な会話をさせるための技術。いかにして効率よく会話にバリエーションを出すかについて解説。
12章:AIモード
キャラクターはファンタジー世界の空間で自律的に動くのと同時に、物語の中で特定の役割を果たす必要がある。それを実現するためのキャラクターの特定の活動傾向を指定する モードと言う機能を解説。
13章:ロギングと可視化
巨大なシステムとなってしまったFFXVを客観的に分析するために試みられた方法を紹介。ログを取り、可視化する試みについて。
14章:これからのゲームAI技術
これからのゲームAIの展開についての考察。その主題はゲームを生成するシステムについて。
【筆者】
上にも書きましたが、筆者は三宅陽一郎さん率いるスクエア・エニックスのAIチームの面々。三宅さんをはじめ多くの方が各章を執筆されています。
私の知り合いだと9章のアンビエントAIの章で、マレーシア人の Wan Hazmer さんが入っています。
彼は FINAL FANTASY XV でリードゲームデザイナーと参加して、今は祖国マレーシアに戻り、METRONOMIK と言うゲームスタジオを立ち上げ「NO STRAIGHT ROADS」と言う新感覚な音ゲーを開発中。世界中のゲームショーで各種賞を取りまくっています。
マレーシアなのでシンガポールと近いのと各種ゲームショーでもよくお会いしております。(本書を実際に書いたのかは聞いてないですが。。。)
やはり多く書籍を出しているのは、ゲームAIでとても有名な三宅さんで、彼は他にも以下のような書籍を書かれています。
ゲームAIで有名な 三宅陽一郎 さん率いる スクエア・エニックスのAIチーム が共著した ゲーム AI本 です。
名前にあるように、FINAL FANTASY XV で使われている各種ゲームAIの技術を対象に、ゲームAIについて解説された技術書 です。
各要素技術の設計開発担当者の方々が、それら技術の詳細まではいきませんが 概要を分かりやすく、各章にて説明されております。
【感想】
本書を読んで、やはりまず大きく感じるのが、最近では人工知能と言えば、Machine Learning や Deep Learning なんかの機械に学習をさせて特徴を自動取得させる機械学習を思い浮かべるわけですが、ゲームAIとはそうではないわけですよね。
要は ゲームの物語の世界が、自然でリアルで、しかしその物語を盛り上げるように知能的に構成されるための手段と言うか技術ですね。
(このあたり私の言葉で表現してるので、筆者や専門家の意見と一致してない可能性があります。。。)
それを実現するために仲間や敵、街の住人のような脇役達も含めたキャラクター達が知的に行動し、小さな日常のドラマから、大きな物語を構成するドラマまでを自然にリアルに表現していくわけです。
世界に存在する各要素がAIで動いており、その世界を実現するための大きな仕組みがゲームAI。通常の機械学習の人工知能を勉強する一環で読んでも、ちょっと違和感を抱くかもしれません。
要は ゲームの物語の世界が、自然でリアルで、しかしその物語を盛り上げるように知能的に構成されるための手段と言うか技術ですね。
(このあたり私の言葉で表現してるので、筆者や専門家の意見と一致してない可能性があります。。。)
それを実現するために仲間や敵、街の住人のような脇役達も含めたキャラクター達が知的に行動し、小さな日常のドラマから、大きな物語を構成するドラマまでを自然にリアルに表現していくわけです。
世界に存在する各要素がAIで動いており、その世界を実現するための大きな仕組みがゲームAI。通常の機械学習の人工知能を勉強する一環で読んでも、ちょっと違和感を抱くかもしれません。
また、本書の内容は後で説明しますが、メインの内容の合間に関係者が集まっての座談会の様子が載っています。それがけっこう面白いですね。
いくつかの座談会が行われたらしく、それぞれ集まった人達が違うようですが、私が興味深かったのはAIプログラマが集まっての座談会。
彼ら曰く、見た目のグラフィックがリアルになったことで、他の要素もよりリアリティが求められるようになったと。戦争中に遊びだしてたらリアル感がない。グラフィックがそこまでリアルでない時はゲームだからと笑って許されたところ。
そして、特にFFXVで成功した人工知能が仲間AIだそうです。チームの仲間が自然に自律的に動く。要は操作している主人公の前にまで仲間が自然に出てくる。当然主人公はプレイヤーが操作しているので、プレイヤーの動きを予測しつつ自然な状態を作っている。
その自然さを作るために、実際に開発者が4人で歩きどのような動きをすると自然か。4人でも自然に2対2になるよね等、実際に観察・実体験をして開発していったとのこと。
また、技術者は機械学習も導入してゲームAIを作る研究はしている。しかし、学習で作っていると微調整が難しいと言うのがあり、物語やゲーム性を考えているゲームプランナーと相容れないものがあると。
【概要】
まず、この大きなゲームの物語の世界を構成するためのゲームAIについて。それには以下の3つの柱があるそうです。
・メタAI:ゲームを神様の視点から眺めて調整。
・キャラクターAI:各キャラクターを自律的に行動させるための知能。
・ナビゲーションAI:キャラクターが直面する多様な地形に関する思考を抽象化する役割。
これらの3つの柱と言われるAIの要素として各種AI又は要素技術が存在します。それら1つ1つ要素が本書では各章を構成しており、それらの関係は以下のようになっています。
メタAI:
仲間AI(6章)、モンスターAI(7章)、兵士AI(8章)、
アンビエントAI(9章)、ロギングと可視化(13章)
キャラクターAI:
意思決定ツール(2章)、AIとアニメーション(4章)、
写真AI(10章)、会話AI(11章)、AIモード(12章)
ナビゲーションAI:
ナビゲーションシステム(3章)、位置検索システム(5章)
また本書は複数の筆者が執筆しており、傾向も難易度も違うので、読むときの目安として以下の読み方ガイドが参考になります。
ゲームの中身に寄り添った章(ゲームの裏側を知ることができる。):
仲間AI(6章)、モンスターAI(7章)、兵士AI(8章)、
アンビエントAI(9章)
AIの基本的な仕組みを描いた章(ゲームAIの基本的な仕組みを知ることができる。):
ゲームAI入門(1章)、意思決定ツール(2章)、
AIとアニメーション(4章)
AIの特徴的な技術を解説した章(ゲームAIの専門的な独立性の高い技術を学ぶことができる。):
写真AI(10章)、会話AI(11章)、AIモード(12章)
やや専門的な章(かなり詳細に踏み込んだ専門性の高い技術解説となっている。):
ナビゲーションシステム(3章)、位置検索システム(5章)、
ロギングと可視化(13章)、これからのゲームAI技術(14章)
【具体的内容】
上にも既に書いてますが、本書の各章はゲームAIの要素としての各種AI又は要素技術についてが1つ1つ説明されています。ここでの具体的内容としては、その各章の概要を本書の記述を使用して書き出しました。
この章立てと各章の概要を見ることで、本書の内容はだいたい把握できるかと思います。
基礎編
1章:ゲームAI入門
そもそもゲームAI(デジタルゲームの人工知能)とは何かについて解説。
2章:意思決定ツール
ゲームと言う箱庭の中で、複雑なマップ・状況における高度なミッションを人工知能に解かせるというようなゲームAIの中心的なテーマであるキャラクターの意思決定について。
3章:ナビゲーションシステム
ナビゲーション技術やパス検索に加え、身体を持つキャラクターがゲームの環境下で目的に沿って運動するための技術を解説。
4章:AIとアニメーション
仮想の身体はモーションによって駆動しますが、そのタイミング・変形・次のモーションへの遷移などを決めるうえで、人工知能がどのようにかかわっているかを解説。
5章:位置検索システム
ゲーム内で現在そのキャラクターがいる周囲の地形を認識し、自分に最も相応しい立ち位置を見つけることを可能にする位置解析技術について。
コンテンツ編
6章:仲間AI
プレイヤーと一緒にいる時間の長いキャラクターは、あらゆるケースに自然に対応させつつ、ほころびが出ないようにしなければならない行動の人工知能が必要で、その仲間AIを解説。
7章:モンスターAI
たくさんの種類のモンスターを統一的な仕組みで扱うことを探求し開発された、広大なマップのいたるところに群生する生命を持つようなモンスターたちの人工知能を解説。
8章:兵士AI
プレイヤーが敵と遭遇した時に「脅威」を感じ、倒したときに「障害を乗り越えた」と言う喜びを感じさせる存在である敵の「思考」「移動」「行動」をするAIについて解説。
9章:アンビエントAI
街の活気を表現するのに必要な群衆(アンビエント)の人工知能。「街とは何か」「人の活気とは何か」と言う点を徹底的に追及したAIに関する解説。
10章:写真AI
FFXVにある自動的に写真を撮る機能で使われる、良いタイミングで写真を撮ってくれる人工知能について。
未来編
11章:会話AI
キャラクターに自然な会話をさせるための技術。いかにして効率よく会話にバリエーションを出すかについて解説。
12章:AIモード
キャラクターはファンタジー世界の空間で自律的に動くのと同時に、物語の中で特定の役割を果たす必要がある。それを実現するためのキャラクターの特定の活動傾向を指定する モードと言う機能を解説。
13章:ロギングと可視化
巨大なシステムとなってしまったFFXVを客観的に分析するために試みられた方法を紹介。ログを取り、可視化する試みについて。
14章:これからのゲームAI技術
これからのゲームAIの展開についての考察。その主題はゲームを生成するシステムについて。
【筆者】
上にも書きましたが、筆者は三宅陽一郎さん率いるスクエア・エニックスのAIチームの面々。三宅さんをはじめ多くの方が各章を執筆されています。
私の知り合いだと9章のアンビエントAIの章で、マレーシア人の Wan Hazmer さんが入っています。
彼は FINAL FANTASY XV でリードゲームデザイナーと参加して、今は祖国マレーシアに戻り、METRONOMIK と言うゲームスタジオを立ち上げ「NO STRAIGHT ROADS」と言う新感覚な音ゲーを開発中。世界中のゲームショーで各種賞を取りまくっています。
マレーシアなのでシンガポールと近いのと各種ゲームショーでもよくお会いしております。(本書を実際に書いたのかは聞いてないですが。。。)
やはり多く書籍を出しているのは、ゲームAIでとても有名な三宅さんで、彼は他にも以下のような書籍を書かれています。
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